「顧客起点イノベーション」で社会に貢献
変わる三井化学グループの研究開発

三井化学グループは、「2025長期経営計画」の基本戦略のひとつに「イノベーションの追求」を掲げています。めまぐるしく変化する社会のニーズに対応していくためには、社会やお客様が何を求めているのかをきちんととらえることが必要不可欠です。お客様のニーズに対して、技術やサービスを組み合わせて新たな価値を提供すること、いわゆる「顧客起点イノベーション」を推進しています。
そのために、当社の研究開発も大きく変わろうとしています。革新素材の創出やソリューションの提案を実現するため、社内外の垣根を越えた連携を行っています。そのようなオープンイノベーション活動を通じた社会やお客様の課題解決に向けた取り組みをご紹介します。

「顧客起点イノベーション」を生み出すために

供給から共創へ
化学メーカーとお客様の関係が変化

当社は技術志向で、ものづくりが好きな会社です。素材づくりに専念し、それをどのような製品にするのか、どのように社会課題解決に役立てるのかはお客様任せのところがありました。ところが近年、技術課題が複雑化かつ高度化し、お客様と一緒になって活用策や解決策を見出さなければならない案件が増えています。
例えばお客様からは、「もう少し触り心地の良いものを」など感性的な言葉で要求が来ます。お客様の漠然とした要求を、私たちの言語である物性値や分子構造に翻訳して素材開発を行い、お客様が試せる形にデザインして提案する。こういったインタラクティブなやり取りが求められています。
私は、強い産業がある国には必ず強い化学産業が存在していると思っています。化学は「化ける学問」と書きますが、いろんな世の中のニーズに分子レベルまで立ち返って考えることができる適応力のある学問です。それが産業を支え、強い競争力を生み出す原動力になっています。

代表取締役
専務執行役員CTO
諫山 滋

“ファーマ型”に加えて“シェフ型”も
総合力で新たな価値を提案

革新的な材料の創出は化学メーカーである当社のDNAとも言える部分です。革新的な技術から生まれた材料が世界のトップシェアを獲得し、収益を支えています。しかし、品質の良い材料を創って提供する「ファーマ(農民)型研究」だけではだめ。その調理法まで踏み込んで提案する「シェフ型研究」が必要です。つまり、当社がもつ素材のほかに、必要なら他社の素材も組み合わせて、混ぜたり加工したり、こんなレシピで調理すればお客様の製品はもっとすごいことになりますよ、というファーマとシェフの総合力でのソリューション提案です。
そのために、研究者には「外に出なさい」と呼びかけています。「世の中が大きく変わっているのだから、マーケットやお客様のところに行きなさい」と。研究者には世の中のトレンドにもっと関心を持ってほしい。なぜなら、そこで新しいニーズと最先端のイノベーションが生まれているからです。会社としてインテリジェンス機能を持つために、研究者の社外派遣やベンチャー企業との情報交換も積極的に行っています。また、事業部はマーケット別の体制ですが、研究部隊は機能別・技術別の体制にしています。当社の技術や知見を最大限に活用するには、融合の場が大切だと考えているからです。

研究者の意識も変化
社内外のオープンイノベーションが加速

生き生きと取り組む研究こそが新しい顧客価値の創造につながります。技術や設備を持ち寄って組織横断的に開発をすることが自発的に起こり、一丸となって研究をする風土ができてきました。さらにこういった活動を会社が認めたことで、社外との協調や共創、融合を始める事例も増えています。

「素材や技術の新しい可能性を探りたい」と立ち上げたオープン・ラボラトリー活動もそのひとつです。外部のデザイナーをパートナーに迎えることで、私たちには絶対に思いつかなかった素材の特徴をとらえた提案がありました。「この材料はこの用途」という固定観念を取り払うと、新たな価値が創造できるのだと、研究者は大きな刺激を受けたようです。rimOnO社の超小型電気自動車の開発に参加したことも、貴重な体験でした。当社の材料提案が短期間で実車化され、研究者の自己実現という点で非常に良いプロジェクトだったと思っています。2016年に発足したロボット材料事業開発室も、組織や分野を超えてボランティアで集まったのが始まりです。今まであまり接点のなかったロボット業界で、当社の技術がどう貢献できるのか、新たなテーマに挑んでいます。

目指す未来社会に向けて

三井化学グループは、目指す未来社会の姿として「環境と調和した共生社会」「健康・安心な長寿社会」「地域と調和した産業基盤」を掲げています。その中で、「環境と調和した共生社会」「健康・安心な長寿社会」に向けて環境に貢献するBlue Value® 製品、QOL向上に貢献するRose Value™製品の売上高比率をKPIとし、貢献の見える化を図っています。
今後は、研究開発のステージゲートシステムに「Blue Value®」、「Rose Value™」の考え方を反映させます。イノベーションは、社会に浸透しないと意味がありません。研究者には開発の過程で実用化イメージを意識してほしい。それが、世の中の様々な課題に対してお客様の立場で解決を図ろうとする「顧客起点イノベーション」にもつながっていきます。

当社が世の中にまだない新しい顧客価値を創造し、ひいては社会に貢献していくのだという誇りをもって、今後も新たな事業の芽を生み出していきたいと思います。

事例 : 「わくわく」と「外へ」から始まったロボット材料事業

2012年、モビリティ事業本部に「未来創生ワークショップ」が立ち上がりました。これは、社員が自由に新規事業を探索してほしいと会社の後押しで始まったものです。キーワードは「わくわく」と「外へ」。わくわくするテーマには自然と人が集まります。会議室の外に飛び出せば、社員有志、当社の弱みを補完できる企業、新しいことに挑戦するお客様との共創が始まります。そこから当社のロボット材料事業が生まれました。

「様々な社会課題解決を期待されているロボットは、今後も“鉄の塊”なのだろうか?自動車のように機能性材料がどんどん使われるのでは?」という仮説を持って外に出ると、社内外で様々な化学反応が起きました。そのひとつが、人と協働するロボット向けの柔らかい部品の開発です。柔らかい素材を求めるロボットメーカーのニーズと当社の材料技術がうまく合致し、これまでにない特殊な部品をともに創り上げました。
2016年4月に正式発足したロボット材料事業開発室は、「ロボット」と「材料」というこれまであまり接点がなかった技術の新結合と新しいヒトのネットワーク形成による、イノベーション創出および顧客起点の新たな価値の創造をリードしています。


人と協働するロボットの一例


総合化学メーカーの強みを発揮できる分野

当社にはモビリティなど既存事業で鍛えられたすぐれた技術や総合化学メーカーならではの多彩な製品群があります。それをロボットに適用し、新しい市場への出口を作る、というのが我々の基本的な考え方です。
既存事業とロボット材料事業とでは材料に求められる機能・性能・品質が異なるので、既存技術の改良や新技術開発が必要です。社外の技術も積極的に活用します。社内外の技術を柔軟に結合させることがイノベーションにつながると信じています。そして、ロボット材料事業のために創出した新技術はやがて既存事業にフィードバックされ、既存事業の競争力を高めるという波及効果があると思います。
ロボット材料事業を通じて、当社グループ内にインタラクティブな新しい関係が徐々に広がっていると感じます。当社の技術蓄積をフル活用するため我々は多くの部署に協力をお願いしていますし、逆にいくつもの研究所や事業部、関係会社から「この技術をロボットに使えないか?」と提案を受けています。
例えば、自律移動ロボットの街中走行実験「つくばチャレンジ2016」では、当社独自開発の圧電センサを組み込んだバンパーを参加チームに提供し評価いただきました。「ロボットが壁や人に衝突したことを検知する」「簡単にすぐ使える」「ロボットも衝突相手も守る」というニーズを受けて、別々の事業部が所管する高感度の圧電センサと柔らかなポリウレタンフォームを組み合わせ、USBをPCに指すだけで使えるモジュールに仕上げようと、ボランティアで集まった社員が試作したバンパーです。専門家と率直な意見交換を行いながら試作品の改良を進めています。
これからも、当社の技術を採用したロボットがどれだけ世の中の役に立つかを第一に考えながら、ロボット材料事業開発を進めていきます。ロボットが社会貢献する上で当社の技術が少しでも役立てばうれしいです。


「つくばチャレンジ2016」で当社バンパーセンサを実装したロボットの様子


ロボット材料事業開発室
主席部員
緒續 士郎

ロボットメーカー、部品メーカーと「わくわく感」を共有

ロボット材料事業は、B to B to C型のビジネスです。エンドユーザーの使い方や課題解決までを視野に入れた研究開発のあり方を確立する必要があります。しかし、当社の力だけでは、お客様や社会のニーズに100%応えることはできません。
ロボットの柔らかい部品の開発では、まず、パートナーになってくれる部品メーカーを探すことから始めました。ここは非常に苦労した部分です。当社の既存事業の多くは、部品メーカーがお客様です。これまで事業部や研究の先輩方が、材料サプライヤーとして部品メーカーと良い関係を築いてきたことが大変助けになりました。
我々の材料が、部品メーカーの加工でお客様の望む形になったり、必要なら他社の材料も使って、部品メーカーで複合化したり。おもしろいこと、新しいことをやりたいと言ってくださる部品メーカー、そして、このような想いを通じて、ロボットメーカーと「わくわく感」を共有することで、新しい製品が生まれてくると実感しています。また、協力していただいている社外の方々は、すぐれた技術を保有されている上、熱い想いや即断即決のスピード感があり、私にとって良い刺激となっています。
これからの研究開発には、このようなオープンイノベーションが不可欠だと考えています。そこには、お客様や協力いただく方々との信頼関係の醸成が必要となってきます。当社の研究者、特に若手にはこうした研究開発のやり方も経験してもらいたいと思っています。今後もお客様や社外の協力者の方々と一緒になって、新しい事業を生み出すという三井化学の新しい研究開発に貢献していきたいと考えています。


合成化学品研究所
リサーチフェロー
山崎 聡

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