安全文化の社会への展開「安全体験コース研修レポート」

 千葉県茂原分工場内にある「技術研修センター」

持続可能な社会に安全は不可欠

安全の知見を広く社会に

製造装置の自動化や安全に関わる設備対応が進むにつれて、運転員がトラブルに遭遇する機会が減っていることや、団塊世代の運転員が大量退職を迎えベテラン運転員の技術技能の継承が待ったなしであることから、技術研修センターの役割は大きくなっています。安全を最優先にしても、リスクをゼロにはできないことを念頭に、事故やトラブルをどう最小限に抑えるか、そのリスクについてどう素早く対応できるかといった取り組みを常識化させ、維持しなければなりません。木原敏秀・技術研修センター長は、「安全や生産にかかる専門技術の継承は工場ごとにOJTやOff-JTで徹底的に行われます。しかし、OJTの基礎の基礎、原理・原則を身につける場が必要です。技術研修センターでの学びが生産現場におけるOJTでも豊かな成果を生み出せるのです」と語ります。
開設以来、すでに三井化学グループの社員5,000名が受講。その中には中国やシンガポールなどの海外からの社員も200名を数えます。実は研修センターを見学に来られたお客様の多くから「ぜひ当社の社員にも研修をお願いできないか」という要望が高まっていました。

木原は、「ものづくりと安全は経営の両輪をなします。安全管理技術は企業が長年にわたり蓄積してきた経験や実績をもとに築きあげてきたものであり、そのノウハウはプロセス技術と一体の企業秘密の部分もあります。しかし、『安全文化はものづくりの底力であり、これを社会に提供することは何にも代えがたい社会貢献である』との経営トップの決断で、企業の枠を超えての開放が決まりました」と打ち明けます。


生産・技術本部 安全・環境技術部
技術研修センター長
木原 敏秀

自ら気づき、考え、解決する人材を社会に

技術研修センターでは「安全体験コース」「運転・設備トラブル体験コース」「運転体験コース」の3つの研修があります。そこでは一貫して「ベテラン運転員の技術を確実に伝え、危険についての感受性を強め、原理・原則を理解させ、自ら気づき、自ら問題解決に取り組むことができる自律的な人材の育成」をテーマにしています。
生産現場で起こりうる様々な災害について学ぶ安全体験コースの場合、①挟まれ・巻き込まれ、②酸欠・中毒、③墜落・落下・転倒、④被液、⑤火災・爆発・静電気の5つについて、実体験を通じて学びます。
例えば、挟まれ・巻き込まれでは、安全装置の付いたローラーに手を入れて痛みを知り、墜落では、安全ベルトを付けて高さ1メートルまで吊られる体験や、ダミー人形の落下実験を通じてどれほど危険性に満ちた高さであるかを体感します。研修生は、「1メートルは一命取る」という安全標語の意味を深く実感するのです。 自らどこに危険が潜むのかを予知し(KY)、どうすれば安全が確保できるかを考え、さらなる危険の存在を想像する。そこからすべてが始まるのです。

なぜ、を考える人材を育成

「なぜ」を重視して研修技法の向上へ

技術研修センターは開設以来、危険の存在と安全確保を深く学んでもらうための研修技法の確立に努力してきました。 講師の田中は、「こちらから答えを言わない。常に、『なぜですか』と問いかけます」。その上で、体験が驚きに満ち、忘れてしまっている危険への本能的な感受性を目覚めさせる工夫があります。
例えば被液では、熱めのお風呂のお湯の中に、素手と軍手を着用して、浸けてもらう体験があります。いつもは何気なくお風呂に入れる温度なのに、軍手にお湯が染みると事態は一変、熱くて手を入れられません。「なぜですか?」。講師が質問します。
落下では、6メートルの高所から工具を落とすと陶器の植木鉢が粉々に砕けますが、ヘルメットを被った植木鉢は傷ひとつないことを実験して見せます。ここでも講師の質問が続きます。「もしヘルメットがなかったらどうなるか」。

「現場には安全を担保するためのいくつものルールがありますが、ルールがなぜルールになっているのかを考え、理解することで、危険と感じるものへの備えができるのです」(田中)。


生産・技術本部 安全・環境技術部
技術研修センター
田中 宏

安全は世界共通の取り組み

異文化交流により、さらに安全技能を高める

講師の山本は、「研修技法の向上は、異文化の相互理解の歴史でもありました」と語ります。例えば、安全確保の重要な所作である「指差し確認」は非礼となる国もあります。「安全の確保には世界共通の原理・原則があることを体験を通じて理解してもらっています」(山本)。

安全は世界共通の取り組みと理解し、独自の取り組みを始めた三井化学グループの海外関係会社もあります。タイのSiam Mitsui PTA(SMPC)(下記コラム参照)やシンガポール MITSUI PHENOLS SINGAPORE(MPS)の取り組みなどです。MPSでは年2回、技術研修センターと相互交流を行い、安全指導リーダーを養成する研修会を続けています。
独自の研修機会を持たない中小企業などには、研修の社外開放は貴重な学びの場になります。木原は、「社外開放することで、お客様との情報交換や要望事項等を通じて、より質の高い技術研修を目指したいと考えています。それが先進国におけるさらなる安全の確保策となり、工業化が進む新興国においても文化の壁を超えた安全文化の育成に役立っていくでしょう」と語ります。


生産・技術本部 安全・環境技術部
技術研修センター
山本 和己


2015年5月、社外からの研修生20名が参加した「安全体験コース」。研修生は1日かけて、5つのテーマに沿った様々な「危険と安全」を体験しました。

参加者の声

装置メーカー勤務(30代)

「安全を学ぶ機会を自社で用意することがなかなかできませんので、こうした研修を受講できるのはありがたいです。個人的には、本来の仕事とは違うサポートに入った場合にこそ必要な、KYの重要性を強く感じました」

ガス会社勤務(20代)

「入社3年目で、仕事にも慣れましたが、自分の周りに想像が及んでいない危険な要素がいかに多いかを知りました。危険と安全は想像力の問題であり、想像力は現実をきちんと見ていくことから生まれるのだと実感しました」

装置メーカー勤務(40代)

「今春、人事・福祉担当の課長を拝命。労務安全担当でもあり、研修があることを知って参加しました。当社では準備が難しい研修を、三井化学さんの研修で体験することで、職場安全の向上につなげられるのではないかと思いました」



Column

海外の関係会社で拡がる安全への独自の取り組み

中国において、コンパウンド製造を担う3社(三井化学複合塑料(中山)有限公司、張家港保税区三井允拓複合材料有限公司、三井化学功能複合塑料(上海)有限公司)は、2014年4月に3日間にわたる初の「中国コンパウンド合同研修大会」を開催。係長・課長の現場リーダー7名に加え、製造部長クラスもアドバイザーとして参加し、「安全・品質・人材育成」をテーマに学び議論を重ねました。これまでも茂原の技術研修センターでの学びはありましたが、現地での本格研修会は初めてのことです。

一方、2014年度の三井化学グループ製造課表彰で「社長賞」を受賞したタイのSiam Mitsui PTA Co.,Ltd.(SMPC)では、総合的生産保全の活動を継続し、職場全体で「学び・点検・共有・改善」という改善活動を日常作業に定着させ、安全確保につなげています。
また、報連相活動や危険予知活動(KY)に加えて、新たに開始したプロセス安全管理(PSM)活動では、技術情報の共有化、プロセス危険度評価(ProcessHazard Analysis (PHA))、変更管理(MOC)強化等の様々な観点から安全活動に取り組んでいます。
今、安全文化は国境を超えて拡がり始めています



タイJVパートナー SCG Chemicals 社長メッセージ

安全は持続可能なビジネスの基盤

安全意識を高めるのは大変ですが、安全文化として醸成することはさらに難しいことです。それはいかに正しい安全習慣と行動を浸透させるかにかかっています。人は時としてルールを守れないことがあるため、規則や法令だけでは安全を持続できません。そのため、安全な労働環境と安全に働く社員の確保のために、SCG Chemicalsでは毎日安全を根づかせることを強力に推進しています。
リーダーには、安全文化の醸成のため、職場で率先して行動する役割が期待されています。私たちは、より強固なプロセス安全管理(PSM)体制を構築中で、未然に事故を防ぐことを目指しています。
三井化学の協力により、SCG Chemicals Operation Excellence Training Center(OETC)が立ち上がりました。OETCでは、ベテラン運転員から安全知識や最善のオペレーション技術を習得することができます。そして、その知識は新規採用者に有効で安全な化学工場の操業のために引き継がれます。
私たちは安全が持続可能な事業の成長を支える基盤であると確信しています。


SCG Chemicals Co., Ltd.
チョロナット社長

アンケートにご協力ください

★印をあなたの評価と合致するところでクリックしてください

アンケートの回答には Internet Explorer 8 以降が必要です。