「レーン教授先端材料シンポジウム」開催について

2008年10月16日

各位

三井化学株式会社

  当社(社長:藤吉建二)は、10月15日、千葉県袖ケ浦市の当社袖ケ浦センターにおいて、ジャン-マリー・レーン教授(フランス、ルイ・パスツール大学)出席のもと、同教授の名を冠とするシンポジウム(The Professor Jean-Marie Lehn Symposium on Advanced Materials at Mitsui Chemicals)を開催いたしました。

  本シンポジウムでは、1987年ノーベル化学賞受賞者であるレーン教授の基調講演を始め、先端材料分野の研究に携わる国内外の著名な研究者6名による講演が行われました(詳細は別紙参照)。企業や大学、公的研究機関を中心に合わせて200名近い参加者があり、「次世代を担う機能性材料創出の現状と将来への期待」について、産学が交わって活発な討論が繰り広げられました。

  当社は、世界の研究者とのグローバルサイエンスネットワークの構築、ならびに社会貢献の一環として、国内外において2003年より国際シンポジウムを開催してきております。本シンポジウムに引き続き、来年(2009年)3月11日-12日、「人類の発展に貢献する触媒科学」をテーマとし、「三井化学 第4回 触媒科学国際シンポジウム」を開催する予定にしております。これらのシンポジウムが、世界中の研究者の交流の場となり、新たな知の創造の場となることを期待しております。

本件に関するお問い合わせ先

三井化学株式会社 CSR・広報部長 山崎 真 TEL:03-6253-2100

シンポジウムの概要

1.シンポジウム名称

レーン教授先端材料シンポジウム
The Professor Jean-Marie Lehn Symposium on Advanced Materials at Mitsui Chemicals

2.開催期日・会場

期日: 2008年10月15日(水)
会場: 三井化学株式会社 袖ケ浦センター (千葉県袖ケ浦市)

3.講演者・演題・講演概要: (講演順)

<基調講演>
◆ Jean-Marie Lehn 教授 (フランス、ルイ・パスツール大学 / コレージュ・ド・フランス)
「ダイナミック・マテリアル : 動的特性を活用した超分子材料」

Jean-Marie Lehn教授は、超分子化学を提唱し、高選択性を発現する構造特異的な相互作用を有する分子の開発と応用により、1987年にノーベル化学賞を受賞した。
Lehn教授は自身の提唱した超分子化学をさらに展開し、その本質である“可逆性”について、非共有結合(超分子結合)を介した分子集合体だけでなく、可逆的な共有結合を介した分子にも展開した。この概念により、複数の分子が可逆的に入れ替わりながら、物理的・化学的な環境の変化や刺激に応じた構成へと自発的に変化するシステムを構築する。これをConstitutional Dynamic Chemistry(CDC)と呼ぶ。当概念は、例えば合成経路の探索や医薬・材料の創製など、非常に幅広い分野に応用可能である。本講演では、CDCをポリマーサイエンスに展開し、モノマーの導入・引き抜きや、交換により、ポリマーの構成要素、物性が大きく変化する例を示した。また、Dynamers(Dynamic Polymersをレーン教授が独自にDynamersと命名)の最大の特徴である外部環境の変化に応じて、物性を変化させる外部適応能力(Adaptiveness)を有するポリマーについても紹介した。これらの動的な性質を有する材料を、レーン教授はDYNAMATSと提唱している。

<招待講演>
◆ 加藤 隆史 教授 (東京大学)
「機能発現のための分子集合体デザイン」

加藤隆史教授は機能材料の分野を先導する科学者であり、液晶、ゲル、電子・イオン活性分子集合体および高分子/無機ハイブリット等の材料の設計・合成・構造制御・機能化に関する研究を進めている。
加藤教授は水素結合、イオン相互作用のような分子間の相互作用による分子の自己組織化、超分子化などの手法を用いる事により、分子単独では成し得ない機能を有する材料(ソフトマテリアル)を創出している。加藤教授によって創出されたソフトマテリアルは、刺激や環境に対する応答性や、異方的イオン伝導性、分子の選択透過性など、多様かつ特異な機能を有し、実用性の高い新規な材料として期待されている。 本講演ではナノレベルで構造が制御された分子集合体から得られる機能性ソフトマテリアルに関する最新の研究成果について解説した。

◆ Bert Meijer 教授 (オランダ、アイントホーフェン工科大学)
「超分子ポリマー : 交換可能な構成モノマーを活用した先端材料へのアプローチ」

Bert Meijer教授は、複合的な分子システムおよび超分子化学の分野における第一人者であり、中でも、超分子的な会合により形成される「超分子ポリマー」についての先駆的な研究で知られる。
Meijer教授が着目している超分子ポリマーは、構成単位分子が非共有結合性の相互作用で連結されているため、外部刺激によって容易に結合の組み換えが起こる。この特徴を利用すると、温度・pH応答性など従来のポリマーにはないユニークな物性が発現する。これまでにMeijer教授は、多点の水素結合を介して会合する特徴的な超分子ポリマーを多数報告してきた。本講演では、個々の分子の向きや重なり、らせん構造誘起など超分子ポリマー設計の概念、さらにその形成機構解明についての分光学的なアプローチを紹介した。

◆ 八島 栄次 教授 (名古屋大学)
「一重および二重らせん高分子を用いた先端キラル材料」

八島栄次教授はらせん高分子分野における第一人者であり、高分子化学や超分子化学にもとづいて、分子認識およびキラル識別能を有する分子や高分子の設計および合成と、その応用を中心とした研究を推進している。
DNAの二重らせん構造やタンパク質のα-へリックスに見られるように、生体高分子の多くはユニークな高次構造を形成する。八島教授は生命機能発現の鍵となるのは「らせん構造」であるというコンセプトのもと、新規ならせん高分子や二重らせん高分子を創製し、らせん構造に由来する特異な機能の開拓を目指して研究を進めてきた。本講演では、らせん高分子(一重らせん)合成から、相補性の鎖からなる一方向巻きの二重らせん高分子の合成、原子間力顕微鏡(AFM)を用いたらせん構造の直接観察について紹介した。

◆ Jean M. J. Fréchet 教授 (アメリカ、カリフォルニア大学バークレー校 / ローレンス・バークレー国立研究所)
「触媒作用を有するナノ反応場、エネルギー材料や治療薬輸送体への機能性ポリマーの展開」

Jean M. J. Fréchet教授は、機能性ポリマー材料の分野において顕著な業績を残しており、基礎から応用まで多岐多彩にわたる研究を展開している。その材料は、分子レベルの精密な構造制御に基づき、目的に応じた特異的な機能の創出を巧みに実現している。
本講演ではFréchet教授の代表的な成果の中から、まず独立した複数の微小反応場を形成し、効率的なone-pot合成反応を実現する触媒材料を紹介した。次に、物性のみならず加工性にも優れた有機電子光デバイス用材料、およびpH変化・光照射等外部刺激によって容易に分解し、内包物質の局所的な放出が可能なドラッグデリバリーシステム用材料を紹介、さらには機能発現のためのポリマー設計と具体的な応用例を示した。

◆ 槙尾 晴之 博士 (三井化学 触媒科学研究所)
「新規触媒を用いた新しいオレフィン系材料の創出」

槙尾晴之博士はこれまで一貫して、オレフィン重合用触媒である固体Ziegler-Natta触媒、メタロセン触媒、そしてポストメタロセン触媒の開発に従事し、新規なオレフィン系機能性材料の創出に挑戦している。
本講演では、まず三井化学で開発された代表的なポストメタロセン触媒であるFI触媒の設計・合成およびそのユニークな特徴について概説した。次に本触媒の特徴を最大限活用することにより見出した新規かつ特異な材料として、オレフィンブロックコポリマーや末端官能性ポリオレフィン、オレフィン/極性モノマーブロック、微粒子ポリオレフィンなどを取り上げ、三井化学におけるオレフィン系機能性材料開発の最近の進展を紹介した。

以上


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