ESG視点を経営に取り込み、持続可能な成長を目指していきます。

[長期経営計画の進捗]

過去最高益を達成し、社員たちの意識にも変化の兆しが見え始めています。

近年、企業を取り巻く環境の変化はますます速くなっています。このような環境に適応しながら持続的に成長していくためには、目指すべき長期的なゴールを定め、変化を柔軟に取り込みながら前進していくことが重要です。
当社グループはこれまでも経済・環境・社会のバランスを重視した3軸経営を掲げてきましたが、さらなる進化を目指して、2025年を目標とする長期経営計画を策定し、新たな取り組みを進めています。
2017年度は、長期経営計画のファーストステップとなる重要な1年でした。前年度に引き続き過去最高益を達成し、順調な第一歩を踏み出すことができたと思っています。長期経営計画では、営業利益2,000億円というチャレンジングな目標を掲げています。また環境軸・社会軸についても、GHG削減や安全確保、女性管理職比率向上などの13の目標を設定し、取り組みを進めています。そのゴールを見据えて社員たちのマインドセットも変化し始めており、確かな手応えを感じています。

新たな顧客価値を創造し事業活動を通じて社会課題を解決

[成長3事業領域における振り返り]

主要製品の拡販により計画を上回る営業利益を達成しました。

「モビリティ」では、グローバルな需要拡大を見据え、安定的な供給体制を構築することが現在の重要な経営課題であると考えています。中心的な事業であるポリプロピレン(PP)コンパウンドの欧州拠点設立を意思決定し、その他増産が必要な既存製品での設備増設、新拠点設立も逐次検討中です。また、自動車の設計・試作・解析などの分野で独自の技術を有するアーク社を買収しました。EV化の流れや、軽量化、快適空間創出などの社会ニーズに対するソリューション提供力の強化を目指しています。
「ヘルスケア」では、世界トップシェアのビジョンケア材料や、柔らかく快適性にすぐれプレミアム紙おむつに用いられる高機能不織布などが着実に業績を伸ばした一方で、歯科材料分野では収益が伸びずに厳しい状況が続いており、早急に解決しなければならない課題と認識しています。
「フード&パッケージング」においては現在、収益の柱となっている半導体製造工程用保護イクロステープが好調であり、新生産拠点の建設を台湾で進めています。食料増産などに貢献する農業化学品分野では、欧米の有力な農薬メーカーと組んで、新規の殺虫剤・殺菌剤の開発を進めており、2020年頃には上市して次の成長に向けたステップにしていきたいと考えています。

[次世代事業と基盤素材事業]

未来を見据えた次世代事業の創出と基盤素材事業のさらなる強化を進めていきます。

10年、20年先の未来を見据え、次なる成長に向けて新たなソリューション事業の創出を目指しているのが、「次世代事業」です。20数年の太陽光パネル用封止材事業の実績を活かした太陽光診断事業は業績に結びつきつつあります。死亡率の高い感染症である敗血症の診療に貢献する「細菌迅速検査システム」や、水や肥料の使用を抑え、食料不足への貢献を目指した「節資源型作物栽培システムiCAST®」については、社会からのニーズも高く、スピード感を重視して事業化を進めていきます。次世代を担う新規事業の立ち上げには、オープンイノベーションはもちろん、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)などの手法も取り入れて積極的に進めていきます。
「基盤素材事業」については、これまで思い切った構造改革を行ってきました。基盤素材は、社会や産業の基盤となる素材を提供するとともに、当社事業にとっては、成長事業領域のまさに基盤となる事業です。化学企業としての長期的な競争力強化のため、今後は生産の効率化を進めるとともに品質の向上のためにも的確な投資を行っていきます。

[成長に向けた投資]

新たな成長に向けて積極的に投資を行っていきます。

長期経営計画では、新たな成長に向けて大きく舵を切り、経営資源を積極的に投入していきます。過去10年間の約3倍規模の約1兆円の成長投資を計画しています。また、基盤強化や設備維持投資は、「安全の質」を高めていくためにも欠かせないため、年間300~350億円を見込んでいます。CO2の排出を削減するガスタービンを導入した自家発電体制の実現や、AIやIoTといった新技術を活用した改善にも取り組んでいきます。

これから事業を拡大していくためにはM&Aも重要な戦略ですが、単に事業の拡大だけを追求するようなM&Aでは持続的な成長にはつながりません。私たちが今持っていない技術やノウハウをグループ内に取り込み、既存の事業とのシナジーによって新しい成長に結びつけていく。それこそが私たちが目指すべきM&A戦略です。
また、長期的な視点で持続的に成長していくために、人材育成、R&Dへの投資も重要です。R&D投資については、前中期経営計画比で2025年度に約2倍の700億円を計画しています。

[ESG視点による経営]

ESGの視点での機会とリスクを把握し、事業戦略を進めていきます。

国連で「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されて以来、「サステナビリティ」がキーワードとなっています。さらに最近では、ESG(環境、社会、ガバナンス)が投資の重要な判断材料として注目されています。
これらの社会の動きは、企業が、社会の持続可能性に向かってどのようにイノベーションを起こしどう貢献していくのか、機会とリスクを的確にとらえて社会とともに持続的に成長できるビジネスモデルに変革していけるのか、が問われているのだと思います。

化学業界が深く関わる課題として、気候変動対応やマイクロプラスチックをはじめとする海洋ごみ問題があります。これらの課題に真摯に取り組むと同時に、今後も人々の生活の質の改善を図っていくために、化学がどのようなソリューションを提供していけるのか。サステナブルな社会の実現は、大きなイノベーションが要求される課題でありますが、大きな機会ととらえることもできます。
企業はこのようなSDGsやESGの様々な社会課題に対して、機会とリスクを的確に把握し、事業活動を通じてどのように役割を果たしていくかを自ら示していかなければなりません。グローバルに展開する当社グループが持続的な成長を果たしていくために欠かせない命題です。

持続可能な開発目標(SDGs):
2015年に国連サミットで採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」で掲げられた17の目標。

[ESG推進体制の強化]

ESG推進室の新設は、「ESGを経営の中核に据える」という当社グループの意思表示です。

当社では2018年4月、新しい組織として「ESG推進室」を立ち上げました。その目的は、ESGの要素を経営や事業戦略に組み込むとともに、ステークホルダーの皆様に向けたESG情報開示を強化していくことにあります。それはつまり、「ESGを経営の中核に据えたサステナビリティマネジメントを行う」という当社の意思表示でもあります。

長期経営計画では、環境・社会軸の目標を13項目設定し、取り組みを進めてきました。中でも、環境貢献価値を示すBlue Value®、QOL向上貢献価値を示すRose Value認定製品・サービスの売上高比率目標を各30%(2025年度)とし、事業活動を通じた社会価値向上を見える化しています。長期的な社会課題解決を事業機会ととらえ、どのようなソリューションを提供できるのか、事業機会の探索を深め、認定製品の拡大に向けてアクセルを踏んでいきます。
また、ガバナンスにおいても、事業のグローバル化がさらに拡大していく中、ESG視点での機会とリスクの見極めがより重要になってきます。取締役会や全社戦略会議の場でESGに関わる議論を活発に行い、当社グループの経営に反映していきます。

社員一人ひとりがESGの重要性を共有し、日頃から社会課題を意識していくためには、社内の意識改革が不可欠であると感じています。急速に変化する社会要請に対して、事業機会を確実に掴むよう経営自らが常に意識し、それを社員と共有していくことが重要だと考えています。

持続可能な成長を目指したESG推進の取り組み

ESG要素の経営/戦略への組み込み

  • 取締役会・全社戦略会議における戦略討議と経営への反映
  • 事業・R&Dを巻き込んだ事業創出とイノベーション促進

ESG情報開示力の強化

  • 投資機関・顧客・ESG評価機関等への訴求力向上
  • ESG対話の強化

特集 : ESGを経営の中核に据える

サステナビリティマネジメント

[安全への取り組み]

安全確保、品質の向上を追求するとともに、社会的責任を果たしていきます。

長期経営計画の目標の1つに「サプライチェーン全体を通じた安全確保・高品質・公正の追求」を掲げています。この中で私が最もこだわっているのが「安全」です。
この「安全」を守り続けるために、私たちにとって忘れてならないのが2012年の岩国大竹工場での爆発火災事故です。私は「安全はすべてに優先する」と機会があるごとに社員たちに伝えてきましたが、2017年度の茂原分工場に続き、2018年6月にも大阪工場において火災事故が発生しました。「安全」に王道はありません。この事実を重く受け止め、これまでの取り組みを改めて見直し、地道な活動を積み重ねてまいりたいと思います。
今一度、サプライチェーンすべてのプロセスにおいて安全の確保と品質の向上を追求し、グローバルにガバナンスを効かせながら、社会的な責任を果たしていきます。

[ステークホルダーの皆様へ]

自らイノベーションの担い手となり、社会と当社グループの持続可能な発展を目指していきます。

代表取締役社長 淡輪 敏

AIやIoTの進展、EVの広がりなど、テクノロジーの進化とともに社会が大きく変わろうとしています。私は、このような変革期こそ、化学企業にとってチャンスであると考えています。化学は産業の基盤を支えるとともに、自らが先導して社会にイノベーションをもたらしてきました。その役割はいつの時代でも変わりありません。当社グループの原点は1912年、当時の社会課題であった食料問題に貢献するため、肥料原料の製造を手がけたことにあります。いま再び、私たちが主体となって社会課題起点のイノベーションを引き起こすことのできる時代がやって来ていると感じています。

グローバルな視点に立つと、私たちが取り組むべき社会課題は数多くあります。ただ、社会課題そのものが大きいほど、一社だけで取り組むには限界もあります。自前主義にこだわらずにオープンイノベーションの活用や異業種と組んでいくことも必要です。一方で、我々の強みは何かということをきちんと理解し、そこに立脚していることも非常に大切だと考えています。

その革新を担っていくのは、「人」の力であることは言うまでもありません。これからの時代、私たち三井化学グループに求められるのは「自主・自立・自走」のスピリットです。社員一人ひとりが社会との関わりを自覚し、一人称で「私はこうしたい」という自らの意志と行動でイノベーションを引き起こしていかなければなりません。全社員の力を結集し、3軸のバランスのとれた経営をさらに進化させ、社会とともに当社グループの持続可能な発展を目指してまいります。

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