Mitsui Chemicals

プロダクトスチュワードシップ

化学物質マネジメントの取り組み

すべての製品のリスク評価とサプライチェーンを通じたリスク管理

三井化学グループは、プロダクトスチュワードシップの考え方に基づき、製品のライフサイクルにわたる化学物質の安全管理をリスクベースで行っています。

新製品は、開発段階を5つのステップに分割してステップごとに定められたリスク評価を行っています。製品開発(原料、物化性)の観点と、製造(爆発危険性、人健康、環境影響)の観点で、研究所、事業部、製造部門、RC・品質保証部、安全・環境技術部でそれぞれ分担して、社則に従ったリスク評価を実施します。製品そのものに加えて、原材料、製造工程で使用する触媒や添加剤、製造工程で発生する副生成物についても対象とし、作業者に対する安全性や製品への影響など、製品の全ライフサイクルにわたるリスク評価を行っています。

WSSD目標を達成するため、化学業界では化学品管理の強化に世界全体で取り組んでいます。三井化学でも、すでに上市済みの既存製品についても、2020年までにすべての製品のリスク評価の実施と、それに基づいたリスク管理を確実に実施するため、ばく露量と有害性の観点からリスクレベルを判定し、優先順位の高い製品から計画的にリスク評価に取り組んでいます。2016年度は、作業者リスク評価をコントロールバンディング手法※1により実施し、当社の全製品約2,500の中から優先度の高い製品約1,000を絞り込みました。2017年度は、絞り込んだ約1,000の製品のうち、高優先製品に対して、欧州REACHのリスク評価に使用されるECETOC TRA※2等の手法を用いて各製品のリスクレベルを算出しました。2018年度は評価対象を低優先製品に拡大するとともに、お客様にリスク評価結果を提供し、リスク低減策を提案していきます。

※1
コントロールバンディング手法:
化学物質から労働者を守ることを目的として、国際労働機関(ILO)が作成した化学物質の管理手法。
※2
ECETOC TRA:
ECETOC(欧州化学物質生態毒性および毒性センター)が開発したリスクアセスメントツール。

製品のライフサイクルを通じた化学物質管理

製品のライフサイクルを通じた化学物質管理

当社の開発ガイドライン

ステージ 役割 レスポンシブル・ケア上の対応
製品コンセプトの仮説設定 安全性に関する情報収集、調査の実施
仮説製品コンセプトの市場機会の評価 プロトタイプ提供時に顧客に安全性情報を提供
限定顧客による予備的市場開発 安全性情報の社内関係者への周知
安全性情報の限定顧客への提供

用途別リスクアセスメントの実施
作業者と環境のリスクアセスメントの実施

製品安全会議の開催※1 → 開発変更※2/中止

リスク管理措置※3の実施
許認可申請の実施
本格的市場開発
事業化、上市 変更管理の実施
既存製品のリスクアセスメントの実施
※1
リスクが十分に低いことが確認できない場合等、社内基準に抵触した場合に開催。
※2
例:原料、製造法、仕様等の変更。
※3
例:用途・使用条件制限、SDSに加え技術資料等での情報伝達。

健全な化学物質管理の視点を取り込んだ事業展開と製品開発

人の健康および環境の保護と持続可能な開発のために、ライフサイクルを考慮した化学物質と有害廃棄物の健全な管理(Sound Chemicals Management)が提唱され、ICCA(国際化学工業協会協議会)でも展開されています。三井化学グループでも、この健全な化学品管理の視点を取り込んだ事業展開と製品開発を進めています。
例えば、「開発ガイドライン」では、5つの開発段階ごとに確認項目を定めており、「製品コンセプトの仮説設定段階」では、製品の構成成分の安全性と法規情報の調査を実施します。

近年、化学物質の安全性について社会的関心が高まり、より高い安全性が求められるようになりました。欧州REACH規制では、当局によるリスク評価が行われていますが、前記のような社会的要求を受け、当局による使用制限等の規制強化の要否判断が、予防原則に基づいたより厳しいものになる傾向があります。
このような状況に対応し、健全な化学品管理の視点から、研究部門、事業開発部門への情報発信と啓発を含む活動を開始しました。具体的には、規制物質や顧客が懸念する一部の物質を管理対象物質として定めており、2018年度から、該当物質の含有を開発初期段階(製品コンセプトの検証段階)で確認する仕組みとしています。また、規制を先取りした物質の選択ができるように、研究・開発者への啓発活動を始めます。
さらに、当社グループでは、環境に貢献する製品をBlue Value® 製品として認定しています。その際に用いる環境影響評価指標の評価軸のひとつに「自然との共生」を設定し、製品が生態系や環境に及ぼす影響の大きさを反映させていますが、開発品や新製品を含む多くの製品の評価を行うには、さらに多数の製品や関連物質の動態(例:物質の運命、ヒト環境への暴露)の把握が必要です。そこで、信頼のおける最新の評価モデルとデータをもとに、化学物質の環境影響評価に必要な評価係数(特性化係数)を追加する作業に着手しました。

これらにより三井化学グループは、人健康と環境の保護、そして持続可能な開発へより貢献できる製品提供を目指します。

社会から信頼される安全性評価体制と最先端の技術獲得

化学製品の開発および化学物質管理のためには法規制等の求める安全性試験が必要です。動物実験が必要となる場合もありますが、三井化学では、法規制および厚労省の基本指針が求める3Rの原則(Replacement:代替法の活用、Reduction:使用数の削減、Refinement:苦痛の軽減)を考慮した当社の動物実験指針および動物実験施設において機関内規程を定めています。これらに基づき動物実験委員会が設置され、全動物実験の事前審査と動物実験施設の実施機関の長による承認がされ、試験の実施と管理、施設・設備の適正性、教育・訓練等について、毎年の自己点検および評価で確認されます。これらの活動は文書化され、動物実験委員会を通じて実施機関の長に報告されます。2017年度は、社外専門家によって自己点検および評価や施設の検証がなされ、適切に運営されていることが確認されました。

リスク評価の世界的な潮流として、既存データへ“in silico”(化学物質の構造から有害性を予測する技術)と“in vitro”(実験動物を用いない代替試験法)の試験データを統合して評価し、必要な場合に限って動物実験を実施するリスク評価手法(IATA)が普及しています。またこれは、刺激性/腐食性、感作性等のOECDの試験ガイドライン等に取り入れられ、各国の規制にも導入されるようになりました。こういった新たな法的要求にも応え、かつ、より信頼性を高めるため、先進的な技術の獲得を積極的に進めています。
例えば2017年度では、動物実験代替法の技術確立貢献への取り組みとして、OECD QSAR ツールボックス(in silicoのひとつ)での刺激性予測の精度を高める取り組みと成果、JaCVAM(日本動物実験代替法評価センター)協力による感作性試験代替法のOECDガイドライン化プロジェクトに参画し、それぞれの成果を日本動物実験代替法学会で発表しました。これからも動物実験代替の取り組みを高め、その推進に貢献していきます。

QSAR:
Quantitative Structure-Activity Relationships。定量的構造活性相関。

新たな安全性評価体制

新たな安全性評価体制

産業界の化学品管理に対する取り組みへの参加

WSSD目標達成のための国際的な取り組みとして、国連環境部(UN Environment)のSAICM※1があります。ICCA(国際化学工業協会協議会)は、SAICM実行促進のため、国連環境部と協定を結び、人材面、資金面などで支援しています。また、ICCAは、レスポンシブル・ケアとグローバルプロダクト戦略(Global Product Strategy、GPS)※2を通して、SAICMが目指す健全な化学物質マネジメントに貢献するとしています。各国の化学工業協会はICCAの下でWSSD目標達成を目指した活動をそれぞれ行っています。

三井化学グループは、WSSD目標達成のため、ICCAが推進する自主的な取り組みに賛同し、積極的に参加しています。

ICCAの活動の一つに「キャパシティ・ビルディング」があります。これは、特に途上国の健全な化学物質マネジメントの能力開発を支援する活動です。当社社員が2015年度から「キャパシティ・ビルディング・タスクフォース」の共同議長を務め、世界の健全な化学物質マネジメントと持続可能性の改善のための支援活動において、リーダーシップを発揮しています。

国内においては、日化協がWSSD目標達成のためにGPS/JIPS※3活動を推進しており、当社はその推進強化の中心的メンバー企業です。2017年度は、日化協が主催するセミナーにおいて、当社社員が講師を務めるなど、日化協の活動へ積極的に参加し貢献しています。

※1
SAICM:
Strategic Approach to International Chemicals Management。国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ。WSSD目標達成のため、科学的なリスク評価に基づくリスク低減、予防的アプローチ、有害化学物質に関する情報の収集と提供、各国における化学物質管理体制の整備、途上国に対する技術協力の推進などを進めることを定めたもの。
※2
グローバルプロダクト戦略(Global Product Strategy、GPS):
各企業がサプライチェーン全体を通して化学品のリスクを最小限にするために、自社の化学製品を対象にリスク評価を行い、リスクに基づいた適正な管理を実施するとともに、その安全性およびリスクに関する情報を、顧客を含めた社会一般に公開する自主的取り組み。プロダクトスチュワードシップを強化するためのもの。
※3
GPS / JIPS:
Global Product Strategy / Japan Initiative of Product Stewardship。GPSの日本における活動の名称。