file.2プラント建設

EVOLUE®

三井化学が誇る圧倒的な技術を、
これまでにない強い事業にするために。

PROJECT Story
EPISODE 1

エボリュー®の力で、
世界の市場を勝ち抜く。

自分たちの製品を、事業化する。

2016年8月、ある1つのプロジェクトが完遂した。それは、シンガポールにエボリュー®プラントを建設するというプロジェクトだった。
このプロジェクトが産声をあげたのは、2009年。
当時、三井化学はポリエチレン分野において、技術ライセンスを供与するビジネスを行っていた。しかし、当時事業部に所属し、のちにプロジェクトリーダーとなる浜田は、さらに一歩踏み込み、製品そのものを事業として展開していきたい、そんな想いを抱いていた。その想いを実現させるためには、高強度や密封性、成形加工性という点から、国内の高機能包材市場における優位性が証明されていたエボリュー®が最適であると考えた。東南アジアや中国において、高機能包材のニーズが高まっていたという背景もあり、事業化と同時に国内市場からアジア、世界へと拡大させるべく、シンガポールにおけるエボリュー®プラント建設プロジェクトは始まった。

エボリュー®には、世界と戦える力がある。

浜田は当時を振り返る。「エボリュー®には世界と戦える力があるという確信がありました。実際、世界の中でも高いレベルを誇る日本市場において、エボリュー®の優位性は既に立証されており、海外市場でもシェアを獲得できると考えていたのです。社内でも『エボリュー®で世界と戦う』という機運が高まっていました。」もちろん、問題がなかったわけではない。エボリュー®の主原料であるエチレンを安定確保する手段が見つけられずにいたのだ。そんな中、チャンスが訪れる。「シンガポールの企業がエチレンの増強を考えている、という情報が入ったのです。」この時、浜田にある考えが芽生えたという。「この企業からエチレンを提供してもらうことはできないだろうか。」そして、浜田はシンガポールの企業と話し合いを重ね、エチレンの確保に成功した。「大きなチャンスでしたね。そして、ここからプロジェクトは具体化していったのです。」

Prime Evolue Singapore Pte.Ltd  Managing Director 浜田 直士(1985年入社) Prime Evolue Singapore Pte.Ltd Managing Director
浜田 直士(1985年入社)
EPISODE 2

プロジェクト実現のため、
乗り越えなくてはいけない数々の障壁。

シンガポールに、会社を設立する。

浜田とともにプロジェクトに参加し、建設チームのリーダーを勤めた坪原は当時を振り返る。
「ただ建設するだけではなく、シンガポールに会社を設立することになるため、そこで利益を生み出せるか、という検討を行う必要がありました。」坪原が検討を始めて1年が経った頃、当時、事業部長という立場からプロジェクトに携わっていた浜田が正式にリーダーとしてビジネス面の業務を担うこととなった。それと時を同じくして、坪原は建設に専念することとなる。坪原は振り返る。「プロジェクトを束ねる適任者がなかなか見つからず、私がビジネス面も兼務していたのですが、浜田さんが来てくれたことで、ようやく建設に注力できるようになりました。同時に本気度が増したと感じましたね。」

生産・技術企画部 坪原 健太(1987年入社) 生産・技術企画部 坪原 健太(1987年入社)

三井化学に、エボリュー®の魅力を伝えるために。

その頃、浜田は壁にぶつかっていた。経営陣からプロジェクトの認可が降りなかったのだ。「それまで、エボリュー®の社内評価は高くありませんでした。だからこそ、エボリュー®の優位性や社外評価について、具体例を挙げながら経営陣に説明していきました。」
このような働きもあり、徐々にエボリュー®に対する社内の評価は高まっていった。
そして、2012年、ついに経営陣から認可が降りる。しかし、ただ達成感や喜びを感じるだけではなかったと浜田は言う。「うれしさが半分、残りの半分は恐怖。これだけの大きなプロジェクトになるので、『本当にやれるのか』という想いでした。ただ、思い描いていた夢に一歩近づいたという実感がありましたね。」
かくして、プロジェクトはようやく本格的なスタートを迎える。

日本とシンガポールとのギャップを、
一つずつ埋めていく。

シンガポールにおけるプラント建設は想像以上に高い壁だった。浜田は言う。「日本とは異なる法制度を理解した上で、プロジェクトを進めなければいけませんでした。また、安全に対する考え方は日本以上に厳しかった。法制度や安全に対する意識が異なると、設計にも影響が出てしまいます。我々の設計思想に基づきながらも、シンガポールという国を尊重した設計が求められるため、極めて高い技術が必要とされました。」

実はこの時、現場でも困難に直面していた。坪原は振り返る。「基本的に、石油化学のコンビナート内にはプラント操業に必要なスチームや電気、水などが全て用意されています。しかし、建設地周辺には何もなく、全てのインフラを準備しなければならなかったのです。コストや年間使用量を意識しながら供給会社と交渉し、一つずつ実現していきました。」

そして、坪原の建設チームの一員として、エンジニアリングを担当した石上邦久は環境面でも大きな問題があったと語る。「シンガポールは高温多湿の気候。運転時のトラブルのもととなってしまうため、配管内部のさびにも気をつけなくてはいけませんでした。また、スタッフも人員不足で、スキルのある人材がこの時はまだ少なかったのです。現地に人事担当もいなかったため、就業規則の作成や採用も坪原さんが担当していましたね。」海外だからこそ起こる様々な問題に直面しながらも、一歩ずつプロジェクトは前進し、2015年、ついに試運転が開始されることとなる。しかし、この試運転でも大きな困難に直面してしまう。

Prime Evolue Singapore Pte.Ltd  AGM Engineering石上 邦久(1993年入社) Prime Evolue Singapore Pte.Ltd AGM Engineering
石上 邦久(1993年入社)
EPISODE 3

数々の困難を乗り越え、
エボリュー®は世界へ。

立ちはだかる、巨大な塊。

試運転で重合反応を行った際、本来は粉状になっているはずの素材が固形化し、反応器内部に巨大な塊が発生、プラントが緊急停止してしまったのだ。この時の状況を坪原は語る。「除去にとにかく時間がかかり、準備を含め再稼働までに要した時間は、最終的に2カ月半にも及びました。」浜田は振り返る。「この時は新聞で他社の業績を見ることが辛かった。当社は業績どころか何も生み出していないわけですから。誰も怪我をしなかったことがせめてもの救いでした。」
石上は言う。「日本とも密に連絡を取り、原因究明に努めました。本社の生産・技術本部、市原工場の製造部など、ポリエチレンに関わる人は総動員で対応していたと思います。日本からの応援、協力を得たことで、ようやく原因を突き止めて、稼働させることに成功しました。それ以来、一度もトラブルは再発していません。10年に一度起こるかどうか、というトラブルでしたね。」
他にも、主要機器を輸送していた船舶の沈没事故、供給会社の設備トラブルによる原料の供給遅延等、本プロジェクトは多くのトラブルに見舞われた。しかし、その全てを乗り越え、プロジェクトは結実の時を迎える。

市場を新しいプロダクトで置き換えていく。

プロジェクト発足は2010年8月。試運転開始が2015年4月。そして2016年8月、プロジェクト開始から6年が経ち、ついに営業運転が開始されることとなる。
本プロジェクトを振り返り、石上は語る。「このプロジェクトでは、日本で10年かけて起こるようなトラブルが1年くらいの間に立て続けに起こりました。しかし、数々のトラブルを乗り越えたことが、結果としてローカルスタッフの成長に繋がっています。今後のエボリュー®の安定生産を支えるための土壌となっていると感じています。」
坪原は言う。「これだけ大変なことが起こったにもかかわらず、メンバーはよく諦めずについてきてくれたと思います。今でも連絡を取り合って、集まっています。良い仲間ができたと思っています。」
浜田が振り返る。「立ち上げの時にはわざわざ日本から立会いに来てくれた人もいて、本当にたくさんの人たちの協力と支えがあったから今があるのだと感じていますね。私の知らないところでもたくさんの方に助けられたのだと思います。プロジェクトに参加してくれたメンバーは、夢を持って新しいプラントをつくり上げる、という気持ちの強い人ばかりでした。何が起こってもモチベーションが下がらずに、一心不乱に進むことのできる良いチームだったと思いますね。」
浜田は最後に語ってくれた。
「私たちにはベースとなる技術があります。ここに新たな技術を付加して、次なる展開を重ねていくことができれば、さらに強い事業にすることができると考えています。ポリエチレンの進化のスピードは遅い。だからこそ新しいプロダクトで全てを置き換えていくことで、市場をどんどん広げていきたいですね。」

建設中のシンガポール・エボリュー®プラント。 建設中のシンガポール・エボリュー®プラント。