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リスクマネジメント

方針・基本的な考え方

気候変動の深刻化、地政学的な衝突や緊張感の高まり、感染症の世界的流行といった事業環境の不確実性の増加にともない、リスクも複雑化しています。こうした中、三井化学グループは、経営や事業戦略に影響を与え得る不確実性、および変化である「リスク」を、中長期的かつ継続的な視点に立ち、脅威と機会の両面から網羅的に俯瞰し、包括的・総合的にマネジメントすることが必要不可欠であると考え、「リスク」による脅威を最小化し、機会を最大限に活用すべく、新たな全社リスクマネジメント体制の構築に取り組んでいます。

当社グループは、継続的な体制の見直しと改善を行いながら、リスクマネジメントを企業経営に活用することで、持続的な成長と企業価値の向上を追求していきます。

体制・責任者

当社グループ全体のリスクマネジメント体制の整備および運営の監督につき、責任を負うのは取締役会です。取締役会の監督の下、当社グループ全体のリスクマネジメントの最終的な責任を社長が、当社グループ全体のリスクマネジメント体制および実行を統括する責任をCSO(Chief Strategy Officer)が負います。

また、社長およびCSOは、当社グループ全体のリスクマネジメントに関する専門委員会として、「リスクマネジメント委員会」を設置します。

各役付執行役員は、リスクマネジメントオーナーとして、自身の所掌・担当する業務領域におけるリスクマネジメントを統括する責任を負い、各委員会(ESG推進委員会、コンプライアンス委員会、レスポンシブル・ケア委員会およびDX推進委員会など)や自身が運営を主管する各会議体(全社戦略会議、投融資検討会など)などを活用し、リスクマネジメントを遂行します。

第1線

各部門(本社各部・工場・研究所・支店・関係会社)長および所管部門長は、自身のラインのリスクマネジメントオーナーである役付執行役員の責任の下、自部門の日常的なリスクマネジメントを遂行します。具体的には年2回リスクモデルに基づきリスクを洗い出し評価を行い、適切にリスクを認識したうえで、それらのリスクに対応するために組織のコントロールを設計し遂行します。また、所管する関係会社におけるリスクマネジメントの監督・指導も行います。

第2線

各部門のリスク管理を確実にするため、専門知識を持つ本社機能部門の長は、自身のリスクマネジメントオーナーである役付執行役員の責任の下、担当する領域における専門的見地から第1線の各部門および所管部門、ならびに関係会社によるリスクマネジメントを支援するとともに、当該領域におけるグループ横断的なリスクマネジメント施策を実行します。

第3線

内部統制室は、第1線と第2線の両方の業務を独立的立場から監査し、経営者と取締役会に対して、アシュアランスを提供します。内部統制室では、業務監査やレスポンシブル・ケアに関する監査を実施し、三井化学グループ全体の内部統制水準を維持・強化し、現存する業務上のリスクが許容レベル以下に保たれるように図るとともに、法定監査の一環であるJ-SOX評価において金融商品取引法で要求される当社グループ全体の財務報告に係る内部統制の整備・運用状況を継続的に確認・評価して、業務の適正かつ効率的な遂行を確保すべく努めています。監査結果は定期的に取締役会および監査役会に直接報告しています。

業務監査では、コンプライアンス確認書を使用した内部統制の自己評価に基づいた内部監査プロセスを導入しています。コンプライアンス確認書には、独占禁止法・下請法・労働者派遣法の遵守、贈収賄・インサイダー取引・ハラスメント防止、安全保障輸出規制の遵守、会社情報および個人情報の適切な取り扱い、人権、情報システムセキュリティ、リスク管理、与信管理、適正な会計および税務処理、適正な内部牽制体制および運用などの項目が含まれ、毎年見直しを行っています。また、本社機能部門に対して行う上記各項目のプロセスオーナーとしての業務実施状況の監査や、社内外のリスク状況を考慮して年度ごとに設定するテーマ監査も実施しています。

レスポンシブル・ケアに関する監査(環境安全監査、労働衛生監査、品質監査、化学品安全監査)のうち、環境安全監査および労働衛生監査は内部統制室が実施しています。本社機能部門が実施する品質監査、化学品安全監査については、適正に実施されているかを内部統制室が監査しています。なお、監査は実地で行うだけでなく、感染症対策などにより実地への往来が困難な場合であっても、リモートで実施できる体制を構築しています。

リスク管理体制

リスク管理体制

※M-GRIP:

Mitsui Chemicals Global Risk Management & Business Support Improvement Platformの略。

リスクマネジメント委員会の役割

  • 三井化学グループ全体のリスクマネジメントの基本方針案、戦略案、計画案、各種策提案およびその他重要事項(リスクマネジメントにかかるプロセスやツールの改善、従業員のリスクマネジメント意識やリテラシー向上の施策を含む)の審議
  • 全社リスクレビューに通じた重点リスク案の審議
  • 当社グループに及ぼす影響や対応方針にかかる、個別の重要リスクに関する討議
  • 当社グループ全体のリスクマネジメントの状況の報告および討議

リスクマネジメント委員会の構成

委員長社長
副委員長CSO
委員役付執行役員
オブザーバー常勤監査役
事務局経営企画部(ESG推進室、総務・法務部、人事部、経理部、生産・技術企画部、RC・品質保証部)
委員長社長
副委員長CSO
委員役付執行役員
オブザーバー常勤監査役
事務局経営企画部(ESG推進室、総務・法務部、人事部、経理部、生産・技術企画部、RC・品質保証部)

リスクマネジメントプロセス

リスクマネジメント体制のもと、次のプロセスにより全社重点リスクを決定し、PDCAを回していきます。

  1. 各担当役員(リスクマネジメントオーナー)は、所掌領域のリスクを俯瞰的・網羅的に把握し、影響度(範囲、収益性/コスト、信用、人的資源、コンプライアンス)、発生時期(長期・中期・短期)、および潜在的なビジネスへの影響(発生確率)から優先順位付を行い、全社的に重要と判断するリスクをリスクマネジメント委員会に報告する。
  2. リスクマネジメント委員会は、各担当役員から報告されたリスクについて、全社的観点から、重要度評価を行い、全社重点リスク案を策定する。
  3. 全社重点リスクは、経営会議審議を経て、取締役会で最終的に決定される。
  4. 全社重点リスクは、戦略ローリング・年度予算・実行計画に展開され、テイクあるいは回避すべきリスクとして可視化され、事業運営、資源投入等の意思決定に活用される。
  5. 環境変化を受けたリスクの変容をふまえ、特に重要なリスクは、リスクマネジメント委員会にて適時かつ継続的なモニタリング、具体的な対応策を討議、決定する。
リスクマネジメントプロセス

グローバルに関係会社のガバナンスを強化し、ベストプラクティスを共有するためのプラットフォーム「M-GRIP」

三井化学グループは、グローバル化の加速にともない増加するリスクの低減とさらなる事業改革・拡大を目指し、2020年度からグループ共通の間接業務基盤となる「三井化学グループグローバル・ポリシープラットフォーム(通称:M-GRIP)」の展開を始めました。「M-GRIP」は、人事、経理、物流など間接業務に関するグループ全体に共通する施策を「グローバル・ポリシー(G/P)」として定め、その施策をグループ各社が確実に実行することを通じて、正しい業務プロセスの実行と継続的な改善を図る仕組みです。さらにはグループのスケールメリットを有効活用することにより各関係会社の活動をサポートすることも意図しています。2022年度も、コロナ禍継続の中、すべてのグループ会社に対して個別にオンライン会議で仕組みを説明し、対話を通じて展開を図りました。また、環境保全・労働安全など3つのG/Pを新たに制定し、2020年度の展開開始以来、G/Pも17件を数え、着実に定着に向けた段階へと進んで来ており、2025年度を目処に、必要なG/Pを整備、拡充し、ひとつの区切りを迎える予定です。グループ全体での共通意識の醸成とともに、企業価値向上に貢献するESG経営や危機管理の徹底をサポートし、リスクの低減・回避とともに事業効率の向上を図り、持続的に成長し続ける企業グループの実現を目指します。

M-GRIP展開チャート

「本社機能部門」「地域統括会社」「関係会社」「関係会社支援部」がそれぞれの役割を持って取り組んでいます。

M-GRIP展開チャート

コラム

~歩み続けた100周年、新世紀に向かってチャレンジする山本化成へ~

M-GRIPスタート当時は重大なコンプライアンス違反が発生したときでした。三井化学本社の購買部に在籍していた私は、調達業務においても性善説では足りないと考え方を大きく変える必要を認識しつつ、G/Pのグループ展開を推進しました。2021年から、今の関係会社に移り、自らが展開していたG/Pがエンティティポリシー(個社の社則)の形で制定されているのを確認したときは、素直に嬉しく思いました。これを神棚に飾っておくことなく、グループ全体でM-GRIPスタート当時の三井化学本社での危機感を忘れず、かつ、個社の事情も加味しながら、有効な仕組みを作り、維持していく長い道のりを歩んで行く所存です。具体例として、当社の購買規則も、複数引合いに関し具体的に分かりやすくする改正を行いました。結果、社内でもグループ全体の方針が反映され遵守すべき内容が明確になったと認識されています。山本化成は、2025年10月に創業100周年を迎えます。コンプライアンスは安全と同様にすべてに優先することを全社員肝に銘じて無事その日を迎えたいと思います。

山本化成(株) 管理部長 杉浦 賢治

山本化成(株)
管理部長
杉浦 賢治

リスク発現時の対応

当社グループまたは社会に重大な影響を及ぼす可能性のある緊急事態が発生し、組織的対応が必要である場合、危機管理規則、および関連する社則に基づき、各担当部門にて状況把握を実施します。そしてその結果をふまえて、総務・法務部および生産・技術本部の担当役員は、全社的立場から当社の採るべき対応および対策本部設置の要否について社長に具申します。社長決定に基づいて対策本部を設置することにより、事態収束に向けた対応の進言・指導を行います。

※緊急事態の例:

・当社グループで発生した事故・事件により、人の生命、身体、財産、生活に被害が発生した場合、または周辺地域の環境に対する影響が惹起される場合

・何らかの事象の発生により、当社グループの人的・物的資産もしくは信用に重大な損失を生じ、業績が著しく悪化、または重大な損害賠償が発生する場合

BCPの整備

当社グループは、大規模な震災、重篤な感染症の蔓延、工場大規模事故等のリスクの顕在化により、当社グループに重大な影響を及ぼす可能性のある危機が発生した場合に備えて、本社、工場、サプライチェーン等の各機能が迅速かつ的確な対応を図るための体制を整え、顧客に対して供給責任を果たせるよう、事業継続計画(BCP)を策定しています。
首都圏大震災に備えたBCPとしては、本社機能が麻痺した場合、大阪工場などの主要拠点にその機能を移管し、指揮命令系統を早期に確立するための「緊急対策本部」や、顧客対応を迅速・適切に行うための「緊急顧客対応センター」の設置について定め、体制を確立しています。また、重篤な感染症の蔓延や工場大規模事故に備えたBCPも策定しています。
事業の運営面では、サプライチェーンの確保のために、一部の重要な原材料などについては、複数購買先からの購入や代替品購入先の確保、当社グループにおける主要な生産品の複数事業所での生産体制構築や一定水準の在庫の確保などの対策をとっています。

また、三井化学は2023年3月に本社を移転しました。高いBCP機能を備えた新しい本社ビルで、業務継続性により優れた本社機能を発揮していきます。